医師や弁護士、官僚や自衛官の国家公務員などは、一度は「電話営業」を受けたことがあるのではないでしょうか。
突然、見ず知らずの人から、自分の個人の携帯や職場に電話がかかってきて、不動産などを「買わないか」と提案してきます。その見ず知らずの人は、自分の名前をフルネームで知っていて、勤務先も業務内容も知っています。
不気味ですし、危険すら感じます。
「買いません、二度と電話をかけてこないでください」といえば、そのときはそれで終わりますが、全然別の人から電話営業がかかってくることがあります。
彼らは「あなたの電話番号」をどのように入手しているのでしょうか。
そして、電話営業を受けないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
「どこから入手したか言いなさい」と尋ねる
最も簡単かつ効果的な方法は、電話営業を受けたときに、「私の情報どこから手に入れたのか」と尋ねることです。
相手によっては、トラブルに発展することを回避するために、簡単に個人情報提供会社を教えます。
個人情報提供会社がわかったら電話をして削除を指示する
個人情報提供会社が判明したら、その会社の電話番号をネットなどで調べて、電話をします。そして、次のようにいってください。
「○月○日、何の関りもない会社から突然、不動産を買わないかと電話営業があった。電話をしてきた者に、どこから私の連絡先を入手したのかと尋ねたら、御社の名前をいった。間違いないか」
すると個人情報提供会社は、フルネームと電話番号を尋ねるので、それを伝えます。その個人情報提供会社が、確かにその個人情報を保有していたら、削除するよう指示してください。それで削除に応じることがあります。
ただし、これで終わらないことがほとんどです。
すでに流出していると電話営業をなくすことは難しい
その個人情報提供会社が氏名と電話番号を削除しても、すでに複数の会社に個人情報を売っていれば、それらの会社から電話営業がかかってくるかもしれません。
また、その個人情報提供会社に個人情報を売った会社は、別の個人情報提供会社にも同じ個人情報を販売しているかもしれません。
医師や弁護士、官僚や自衛官などの国家公務員などは、不動産会社だけでなく、さまざまな業界の企業が「上顧客」と考えているので、個人情報が流通しやすいのです。
一件ずつ断るしかない
電話営業を受けないようにするには、電話営業をしてくる相手にきっぱり断るしかありません。また、先ほど紹介したように、個人情報提供会社を突き止めて、削除を指示してください。
これを続けていると、ぱったり止むことがあります。
弁護士を立てて対策を講じたり、訴訟を起こしたりすることも不可能ではありませんが、電話営業を完全に駆逐することは難しいでしょう。
徒労ではありますが一件ずつ断るほうがよいでしょう。
なぜ個人情報が流出するのか
「個人情報の流出」と聞くと、企業のサーバーがハッキングに遭って情報が盗まれたり、悪質業者が個人情報名簿を売買したり、といった違法な状態をイメージするかもしれませんが、すべてそうとは限りません。
合法的な「流出」もある
まず、企業が個人情報を収集することは問題ありません。たとえば、A社の営業パーソンが任意の会合で医師と会い、名刺交換した場合、その営業パーソンが後日、その医師に電話営業をかけても問題ありません。
ただこの状態は、A社の営業パーソンと医師は、まったく知らない間柄ではないので、個人情報の流出とはいいません。
では、その営業パーソンが、自分の部下に医師の名刺を渡して「この人に電話営業をかけるように」と指示して、部下がそれを実行したらどうでしょうか。
その医師は、まったく見ず知らずの人から電話営業を受けたと感じるでしょう。
また、もし、A社の営業パーソンが、外部の会社に電話営業を委託して、その外部の会社に医師の名刺の情報を渡したら、どうでしょうか。
医師が、外部の会社から電話営業を受けたら、「完全に見ず知らずの人」から電話が来たと感じるでしょう。
しかし、A社が電話営業の業務を外部の会社に委託して、そのときにA社が持っている個人情報を外部の会社に渡すことは違法ではありません。
もちろん、A社は、委託先の外部の会社がきちんと個人情報を管理していることをチェックしなければなりません。しかし、個人情報がここまで流れると、それ以上の流出を完全に食い止めることは不可能でしょう。
「第三者に提供するなといわれなかったから」という抗弁は通用する?
個人情報については「オプトアウト」というルールがあります。これは、個人情報を持っている会社は、個人情報の本人から「自分の情報を第三者に提供しないでほしい」と求められたら、第三者に提供してはいけない、という内容になっています。
個人情報を持っている会社が、個人情報の本人に「本人の求めがあれば、第三者への個人情報の提供を停止する」などと伝えると、オプトアウトが適用されます。
オプトアウトが適用されると、本人が「自分の情報を第三者に提供しないでほしい」と要請しない限り、個人情報を持っている会社は、第三者に個人情報を提供しても問題ない、ということになってしまいます。
個人情報保護法が改正され、オプトアウトのルールが厳格化されましたが、悪質な業者は、「オプトアウトルールを守っている」と抗弁するかもしれません。
悪質業者は、電話営業をストップさせるために、わざわざ訴訟を起こす人はいないだろうと踏んでいるのです。
しっかり「不快感情」を伝えましょう
電話営業を不快に感じたら、しっかり「不快感情」を伝えましょう。そして、「どうして私の情報を持っているのか」と詰め寄りましょう。
電話営業をするほうも、相手に詰め寄られたり怒鳴られたりすると、怯みます。そして、仲間うちで「怒鳴る人だから電話営業をしないように」という情報を共有するようになります。
よほど頻繁に電話営業がかかってくるのでなければ、ひとつずつ不快感情を伝えれば、そのうち止むか、少なくとも電話がかかってくる頻度は減るはずです。
残念ながら「これくらい」しか、電話営業対策はないのが実情です。